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"白装束の集団"とパン屋の思いで

"白装束の集団"が世間を賑わせていた頃、あるパン屋さんで働いていました。東京在住あるいは通勤通学で都内に通われている方は名前を聞けばご存じと思われるそこそこ名の知れたパン屋さんです。

といっても私は都内ではなく、地元大宮駅の駅ナカの店舗に勤めてましたけど。売り子ではなく、仕事はパンの製造でした。
製造所は大宮駅から宇都宮線でひとつ目の「土呂」駅前にあるマンションの1階。そこで焼いたパンを契約業者が軽貨物自動車で大宮の店舗まで運んでいたのでした。

とにかく朝が早くて大変でしたよ。私は正社員でなくて職探しの合間のアルバイトとして勤めていましたが、正社員の方のなかには深夜の仕込み作業などに専念できるように、会社が借り上げている職場の上のマンションに住んでる人もいましたね。

この時期はシュトーレンの製造も一段落し、クリスマス前の"嵐の前の静けさ"といったところでしたでしょうか。

クロワッサンを焼いていたときに手に負った火傷の後もまだ残っていて、その傷跡を見るたびに楽しいことや辛いことなど、あの頃の想い出が脳裏によみがえってきます。女の子も何人か働いていたけど、みんな手や腕にいくつも火傷跡を作っていたなあ。

辛いことばかりでなくうれしいこともありました。失敗したパンは別にとって集計してるのですが、休み時間には食べてもいいことになっていたんです。みんなお昼時間が近くなると失敗パンが入っているケースのなかを確認して、お目当てのものがないかチェックするんですよね。僕も普段は値段が高くて買えないソーセージの載ったパンがないかよくチェックしてましたっけ(笑)

勝手口の外に喫煙所がありまして、そのころはまだたばこを吸っていた私も作業が一段落すると仲間とたばこを吸いながら、くだらない話に興じてました。みんな白いつなぎのベーカリーユニホームを着ていて、遠目には当時話題になっていた"白装束の集団"と間違われるから喫煙所にあまり長居はするなと、上司に冗談めかして注意されてましたよ(笑)